農地改革の評価については今日大ざっぱにいってその実質的効果を肯定する方向が打ち出されていると考えてよかろう。島根県の穀倉いわれる斐川村、とりわけ村が田と畑より成立って山林なく、しかも解放時約六六%の小作地率をもつ久木地区において農地改革はドラステイツクな影響を及ぼし、「所有と経営との分離がおおむね解消し」「地主制の解体」を結果したとみるのが実態を衝いている、これが調査を終えての私の実感である。そして農地改革、及びそれのみが可能にしたその後の広汎な土地改良事業の過程を通じてその前後に、少なくとも経済的側面において明確な断層と対照とが看取される。私の課題はこの断層と対照を流通過程に即してみることであるが、さしあたりその指標を産業組合→(農業会)→農業協同組合におき、その役割と性格の変化を通じて解明したい。本稿はその第一稿で産業組合の成立までを取扱う。