島根大学論集. 人文科学

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島根大学論集. 人文科学 4
1954-03-31 発行

地域構造における計量化に関する一試案

池田 善昭
ファイル
a006004h011.pdf 1.55 MB ( 限定公開 )
内容記述(抄録等)
地理学の主題は地域(Region)の闡明にある。地域は単なる空間(Raum)あるいは領域(Gebiet)ではなく、環境と主体との共存による立体的な系である。地理学において元来その最も基礎的な分野を形成してきたかにみえる自然環境の分析的研究は、社会との連関において自然を考察することに疎漏の感なきにしもあらずという状態であつた。かくして一般地理学と地誌学との対置、自然地理学と人文地理学との並存という現象が生ずるに至つた。地域概念の本質を現代史的な視野において考察する場合にも、環境の自然科学的側面と人文科学的側面との質的な相異を明らかにし、できうれぱその計量的な比較考察が行われなけれぱならないと思われる。自然地理学の延長のごとき存在であつた従来の一部の人文地理学では、人類の居住や生産の諸原理までも自然法則の中に埋没されたかにみえた。他方、社会経済史的な観点を強調するのあまり、自然の要因を軽視する傾向もなきにしもあらずであつた。地理学の各分科で共通に存在しうる研究対象は、一定の領域を占める土地空間である。このような空間の統一的な考察は、地域という概念においてなされてきたが、これも決して地理学固有の研究領域ではないかにみえる。社会学その他の隣接科学にも地域という用話が頻繁に使われているからである。然しこれは、地理学における地域なる概念を相当修正すぺきことを示すものであつて、地域を地理学の対象とすることの危険性を表わすものではない。筆者は、地域の構成要素の各々の間に存在する関係を一つの因果関係として認め、各要素に次元という単位を設けることにより、地域を計量的な面から考究し、地域構造の本質を明らかにせんとした。本稿はその一部を示すものである。