島根大学論集. 人文科学

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島根大学論集. 人文科学 1
1951-03-31 発行

出雲国における方形墳と前方後方墳について

山本 淸
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内容記述(抄録等)
本稿に於て論じようとするところは、主として一般に日本には稀にしか存在しないとされている方形墳並により以上稀なとされている前方後方墳は、出雲の古墳全体の中では如何なる位置を占めるかということである。
元來筆者は考古學に於ては地方々々における詳紬な地域研究は非常に大事な事であると思う。考古學の対象となる資料は主に土中にあり、地方の各方面に分散しているものが多い。この点では特定の場所に多く集積される傾向の強い文献などを資料とするのとは大いに趣が異ると思う。考古學では各地各方面の知見を綜合して、はじめて妥當適正な成果が齎されるはずである。出雲地方の古墳についてくわしく調査しようと決心するようになつたのは、このような見地からすると餘りにもこの地方の調査が出来ていないのは遺憾だと考えた(例えば隣の鳥取県では大正年代既に梅原博士の立派な報告が出ているのに比べて著しくおくれている)ためであるが、更に今一つの理由としては、記紀等の神話伝説には出雲は極めて顕著な存在であるが(それが畿内で成立したものにもあれ、叉は出雲で成立したものでもあれ何れにしても)遺物遺跡の示現する出雲地方の文化の真相は如何なるものであるかを明らかにする事は古代史研究の上に極めて必要なことであると考えられるからである。
本稿では直ちにそのような問題にふれる事を目的とするのではない。唯そのような問題を考えることに対しても役立つであろうところの一つの基礎的な事実を見ようとするのである。
出雲地方の古墳の地域的研究をするに當つての根本方針として、発屈によつて或る小数の古墳を精査するということはさし控え、先づ一応普ねく出雲國内の古墳全体について、現状のままで知り得る限りでは、それが如何なる様相を呈しているかを明かにすることとし、なるべく多くの古墳についての基本調査をすることとした。