島根大学法文学部紀要. 文学科編

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島根大学法文学部紀要. 文学科編 6 1
1983-12-25 発行

同族村落における社会結合と小祠信仰

Social Groups and Cult at a Dozohu Community
喜多村 正
ファイル
a003000601h008.pdf 2.89 MB ( 限定公開 )
内容記述(抄録等)
新潟県北部から山形県にかけては,マキと呼ばれる同族結合が見られる。本論で扱う中継部落も例外ではない。
村落生活を通じて展開される家と家との関係,人と人との関係を規定するもっとも基本的要因のひとつとして,この部落にあっては,同族関係を挙げることができる。すなわち、種々の社会事象は,本質的には同族結合のありようによってその存在が規定されている,とみなしうるのである。本論では,いかにそれが強い規定要因として働いているかを追求してみたいと考えている。
ひとくちに同族関係と言っても、とつひとつの同族組織をみていくと,その社会関係の質においてかなりの変差が見られ、その差は社会規定要因それ自体のさまざまの違いとしてとらえなおすことができる。
中継部落は三つの単位集落から構成されているのであるが,その集落間にあって,同族結合のあり方が対照的に異っているのが特徴である。ここでは,三地域間のさまさまの社会事象の現われ方の違いを,地域間における同族の持つ社会的差としてとらえなおしてみたい。たとえば、そのひとつとして,山の神信仰に代表される小祠信仰をとりあげてみることにする。信仰というものは具体的な儀礼行為として表現されることになる。この行為は,信仰自体の内容によって規定されてくることは論をまつまでもないが,それが社会的行為でもある以上,必然的に社会関係を反映し,社会関係のあり方によって左右されることになる。端的に言えば,同じ山の神に対する宗教的行為でありながら,三つの地域間で違った現われ方を取っており,それを同族結合の違いに還元して眺めてみたいと考えている。