この小論の目的は,いわゆる Adverbial NP の統語論的範疇は NP ではなく,PP であることを論証することである。1.で,NP 論を提唱した Larson(1985)の論点を要約し,それを出発点として,2.で Larson の扱っている典型的な Adverbial NP の範疇が NP ではなく PP であることを論証し,3.で,here,there,today,yesterday,...等,語彙項目自体が Adverbial NP となる場合も PP と分析されることを示す。4.では,2.,3.に入らない副詞的用法の NP に簡単に触れ,その点をも踏まえて,5.で関係詞節における Pmissing 現象との関係においても,Adverbial NP は PP と分析すべき根拠があることを示す。