本稿の目的は、過去に実施した遺族調査の自由記述欄の回答を分析することを通じて、在宅緩和ケアを利用した家族のニーズについて探索的に検討することである。検討の結果、自由記述欄の回答は、「ケアへの助言」、「病院との違い」、「余命・死期の示唆」、「訪問速度と頻度」、「臨死時立ち会い」、「死後の処置や対応」、「グリーフケア」、「制度・費用への不満」の8 つに分類できた。以上のニーズの多くは、看取りに際しての家族の身体的・精神的負担の軽減に関わるものであるが、一部には在宅で家族を看取ることへの漠然とした不安への対応や死別後のグリーフケアに関する内容が含まれる。後者については、医療・福祉サービスの充実のみでは解決しえない死生観や文化に関わる課題を含んでおり、今後さらなる検討が必要である。