小稿は三角縁神獣鏡の新例を紹介し、その資料的意義を述べるものである。ことの発端は、2022 年8月3日に栃木県足利市にお住まいの岩月達之氏宅をご所蔵の古墳時代倭鏡の実査のために訪れた際に、同氏から1点の三角縁神獣鏡の破片資料を示されたところにある。拝見してただちに「同笵鏡」の存在が判明したため、写真撮影と断面図作成をご許可いただき、とりあえずの資料化を実施した。と同時に、破片資料といえどもその資料的価値が小さくないことを認識した。
その後、この「仿製」三角縁神獣鏡の新例を学術的に位置づける必要性があると判断し、あらためて岩月氏のご許可をいただいてここに公表することとした。公表についてご快諾いただいた岩月達之氏には、満腔の謝意を表する次第である。