社会文化論集

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社会文化論集 19
2023-03-20 発行

自治体公文書の評価選別に関する現状と課題 ―公文書館等設置自治体へのアンケート調査から―

Current Status and Issues of Appraisal and Selection of Municipal‘ Archival’ Records: A Questionnaire Survey of Municipalities with its Archives
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内容記述(抄録等)
 地方自治体における公文書の管理は、適正な業務の遂行や行政運営全般の適正化のために重要であるが、それのみならず、住民への説明責任を果たすためにも不可欠なものである。また、自治体公文書は住民共有の知的資源としても広く認識されてきており、住民の知る権利の行使や歴史資料等としての利用、さらには、行政と住民双方からの行政活動の検証や政策の評価のためにも重要なものと位置づけることができる。こうした多様な価値を持つ公文書の管理について、2009 年に制定された国の公文書等の管理に関する法律(以下、公文書管理法と略)は、その第34 条で、地方公共団体においても、「この法律の趣旨にのっとり、その保有する文書の適正な管理に関して必要な施策を制定し、及びこれを実施するよう努めなければならない。」とする努力義務を課しているが、未だ、同法の趣旨にのっとった適正な文書管理が十分に浸透しているとは言い難い現状にある。このことは、公文書管理条例を制定している自治体が都道府県で15 団体、政令指定都市で6 団体、市区町村で32 団体(2022 年7 月時点)に留まっていることからもうかがい知ることができる。他方で、最近では、自治体の諸活動や歴史的事実の記録である公文書が住民共有の知的資源たることに鑑み、「区民の知る権利を保障し、区民の区政への積極的な参加を推進するため」の「区民合意のもと」での公文書管理を、理念として条例で明確に示した豊島区のような例もみられるようになった。
 こうした住民の合意に基づく公文書管理の促進に向けて、本稿執筆メンバーは、適正な公文書の選別・廃棄、重要な公文書の永続的保存を行っていくための評価選別という営為に焦点を当て、「市民参加による自治体公文書の評価選別に関する理論的・実践的研究」という調査研究プロジェクトを進めている。当研究プロジェクトでは、自治体におけるより適正な公文書管理体制を、各自治体の実態に即していかに実現していくかという問題関心のもと、その基礎的調査として、現状と課題を把握すべく、国内の公文書館等設置自治体へのアンケート調査を実施した。本稿では、この調査の目的を示し、その実施結果をまとめた上で、若干の考察を行う。