農業分野において、IoTやICT技術の活用によって、伝統的生産方式と流通販売構造が大きく変化している。
中国農業にとって、小規模で家族を中心とする生産と経営の方式をいかに市場と連携できるかが農業発展に最大な課題とされている。そこで農業生産分野ではICT技術の導入によって生産効率の向上、また流通販売領域ではIoTを通じたインターネットビジネスによって農産品の流通と販売問題を解決し、農家所得の向上や農山村地域の活気化の促進にも効果があった。また、情報技術の推進によって、インターネットを通じて生産者と消費者のコミュニケーションが実現し、農山村の伝統文化の宣伝、伝統技法の復興作用も見られた。
本稿は中国における農業分野に関連する主なEコマース政策を整理し、そして著者らが2019年に実施した中国山東省における野菜生産および加工販売に関する現地調査の資料に基づき、中国における施設野菜栽培にICT技術の導入、および農産品を扱うEコマースの事例を取り上げ、農業におけるIoTの可能性と課題を議論する。