デフレの深刻化とともに、職を失う人が急速に増えている。総務省によれば、2001年7月に完全失業率(季節調整値)が5%を超え、10月には5,4%と過去最悪の水準を更新した。さらに、グローバル化による産業の空洞化、不良債権処理の本格化と過剰債務を抱えた企業の破綻、情報技術(IT)不況など、変化の荒波が雇用の基盤を突き崩し、人員整理の波は幅広い業種に及んでいる。本格的な高失業時代の到来を前に、日本中が雇用不安に怯えている。
政府は雇用情勢の悪化に対応するため、(1)規制改革を柱とする雇用創出(受け皿整備)、(2)求人と求職者の条件のずれから生じる雇用のミスマッチの解消、(3)セーフティーネット(安全網)の整備等からなる「総合雇用対策」決めた。しかし、内容的に即効性はあまり期待できず、企業や労働団体の一部からは、ワークシェアリング(仕事の分かち合い)で当面をしのぐことが具体的に議論されはじめている。
ところで、雇用状況の悪化は、地方部ではさらに深刻な状況となっている。山陰地方でも建設関連や縫製業を中心に大型倒産が相次ぎ、しかも、受け皿として期待されていたIT産業もアメリカのIT不況の影響からその機能を果たし得なくなっている。2001年10月の島根県の有効求人倍率はO,68と過去最低を記録し、今後、小泉政権の構造改革が進めば、地方の「痛み」はさらに拡大し、地域経済の底割れや地域社会の崩壊すら現実のものとなりかねない。
そこで本稿では、このような状況の下で急速に悪化を続けている島根県の雇用状況を概観するとともに、小泉構造改革の推進が、今後の島根の雇用状況にいかなる影響を与えようとしているのかについて検討する。