2001年4月より、財政投融資改革とともに郵便貯金資金の全額自主運用が開始された。これにより、すでに資金運用部に預託されている郵貯資金は、預託期間(原則7年)の満了時に郵便貯金に償還され、以後7年間にわたり段階的に全額自主運用に移行することになる。
ところで、郵便貯金はこれまでも金融自由化対策資金として自主運用されており、2000年度末の運用残高は57兆円に達していた。今後、このような運用が2008年には全郵貯資金におよび、すこぶる巨大な投資ファンドが国内外の金融市場に出現することになる。
このような郵貯資金の巨大さゆえに、その全額自主運用が金融市場の不安定化要因になるのではないかとの危倶もされている。またこのことをもって、郵貯民営化の論拠の一つにもなっている。今後の郵貯資金の運用実態については、詳細なデータ分析にもとづく実証研究が求められると思われるが、郵貯資金の自主運用が始まったばかりの現時点において、今後検討すべき論点、もしくは問題点を整理しておくことも必要であると考える。
本稿は、このような観点から、今後の郵貯資金の自主運用がわが国の金融市場に及ぼす影響を分析する上での課題整理を目的として、これまでの郵貯資金の運用実態を分析したものである。
なお、郵貯資金の自主運用とかなり性格が似かよっているものに簡易保険資金の運用があり、この資金量も2001年9月末で約127兆円と郵貯資金のおよそ半分程度ではあるが、やはり巨大なものである。しかしながら、簡保資金は郵便貯金とは異なり保険金・年金保険であるため、独自の分析が必要であると思われるので、本稿では簡保資金を念頭に入れつつも、郵貯資金の運用に限定して考察した。郵貯資金と簡保資金を統合した資金全体の運用がわが国の金融市場に及ぼす影響の考察は、今後の課題としたい。