経済科学論集

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経済科学論集 16
1990-01-31 発行

翻訳 1970年代後半以降のアメリカ銀行業の構造変化

Translations Dean F.Amel and Michael J.Jacowski : Trends in Banking Structure since the Mid-1970s
アメル ディーン F.
ヤコウスキー ミカエル J.
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内容記述(抄録等)
 アメリカの銀行業の構造は,1970年代後半以降大きく変化した。1977年から1987年までの間に,銀行業組織(banking organization)〔独立銀行とともに銀行持株会社も一企業体とみる概念。〕の数はかなり減少したが,最大規模の銀行業組織が保有する銀行資産のシェアは急拡大した。それとともに,銀行は従来までの地理的境界線を越えて営業を拡張するようになり,商業銀行と非銀行系金融機関との差異も薄れ,銀行のM&A件数が急増した。このような事態の展開をもたらした諸要因は現在もなお存在しており,引続き銀行業の構造に急速な変化をもたらすものと思われる。
 近年の銀行業の構造変化は,少なくとも三つの理由からして興味深いものがある。第一に,銀行の営業コストの中には経営の規模と連動して変化するものがあるが,そのコストの変化が銀行の業務効率に影響を与え,さらには銀行収益,銀行が提供する金融サーヒスの価格・質・利便性をも左右するであろうということ。第二に,理論と経験が示しているように,銀行業の構造変化ならびに市場への参入条件の変化は,金融サービスを提供するうえでの競争の度合に影響を与えるであろうということ。非金融機関と同様,銀行業でも競争の度合がサーヒスの価格,収益性を左右するのである。最後に,銀行業の構造変化が起こりそうな時には,銀行業で経済資源の総合集中度(aggregate concentration)が高まることの是非をめぐって,これまでにも激しい論争がなされてきたという歴史的経緯があるからである。
 近年に生じた銀行業の構造変化は広範囲にわたっており,それによって生じた問題も重大なものであるから,これらの事態の原因とそれのもつ意味を検討することは時宜にかなっている。本稿では初めに過去10年問に銀行業で生じた主たる構造変化の原因を論じ,その後にこの変化を全国レベル,地域(regional)レベル,州レベル,および地方(local)レベルでのデータで分析する。
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