三〇年来続けてきた「比較宗教学」の授業内容を、コロナ禍を契機として改めて吟味し直して文章化し、オンデマンドで提供してから今年で三年になる。今回は、本誌の前号に掲載した「比較宗教学講義Ⅱ――キリスト教」の続編として、イスラム教を扱った第三章を公開する。もとより私はイスラム教の専門家ではないが、宗教についての予備知識をほとんどもたない一般学生を対象にして、とりわけわれわれ日本人になじみの薄いイスラム教を理解する上で最低限必要となる基本的知識を整理して提供することには、それなりの意義があると考える。本稿は、第一章「宗教のとらえ方」で示した方法論的不可知論の立場から、比較宗教学の枠組みを前提としてイスラム教を眺める一つの試みである。一読されて批評を賜ることができれば幸いである。