島根大学教育学部紀要. 自然科学

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島根大学教育学部紀要. 自然科学 7
1973-12-25 発行

ロッシェル塩結晶におけるピエゾライン

Piezoelectric Lines in Rochelle Salt Crystal
酒見 次郎
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内容記述(抄録等)
 Kojima等は,AgIの沃素核の核四極共鳴吸収測定の過程において明らかに核四極共鳴による吸収線とは異る多くの共鳴線を発見し,更に,ZnS・水晶・ロッシュル塩等もまた同様の共鳴線を生ずることを見出した。Livingston も,塩素核の核四極共鳴の実験において圧電性物質の中にはある条件の下で核四極共鳴線と見間違い易いpiezoelectric lineを生ずるものがあると報告している。このようにして見出された主として圧電性物質において数MHzから数百MHzの広い周波数範囲にわたって現われる正体不明の共鳴線を,ピエゾラインと呼んでいる。
 Kojima等は,更に水晶・ロッシュル塩の単結晶において強く鋭い等間隔に並んだピエゾラインの系列を見出し,その系列の一つが油の一滴を結晶表面のある特定の点に付着させることによって消えることや,結晶を二つに分割していくと常にその片方にだけこの共鳴線が現われることから,この鋭いピエゾラインを生じさせている共鳴振動は,結晶のある非常に狭い領域の中に起っていることを示した。また,共鳴振動のこの局所性,熱処理およぴ放射線照射の結果,Transient noiseの観察等から,このピエゾラインは,結晶の不完全性と密接な関係を持っていることを明らかにした。
 筆者は,ピエゾラインの周波数の温度依存,ロッシェル塩における共鳴振動の局所性,共鳴点付近のエッチピットおよび分域構造,γ線照射効果等について研究してきた4)~6)が,本論文では,上述の系列をなす鋭いピエゾラインについて,より精密な定量的結果が得られたので報告すると共に,その結果についての理論的考察を述べる。