島根大学教育学部紀要. 自然科学

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島根大学教育学部紀要. 自然科学 20
1986-12-25 発行

ある種の需要予測と供給に関する一考察

A Study on a Supply and Demand Forecast for an Agricultual Crop
福田 悌次郎
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内容記述(抄録等)
 次のような一種の生産計画問題を考える。
 ある作物の栽培に際して,品種A_j(j=1,2,…,s)については,栽培を開始してから商品として完熟するまでにr_j回の作業工程を必要とするとしよう。この作業工程とは,例えば,施肥であったり,薬剤散布であったり,または除草などであると考えていただきたい。
 少量栽培の場合は,品種が多くても,1つの作物ごとに必要回数の作業工程を確実に実施して完熟させることができるが,多量栽培の場合には,広範囲な耕地全体に画一的な方法で一斉実施(例えば,薬剤の空中散布など)を行う関係上,1回の作業の実施で,1つの作物に確実にその作業工程が実施されるとは限らない。
 つまり,栽培地における気象や地形,その他の諸条件は考慮せずに,これらのすべてが均一であるという理想的な場合を想定して,最も経済的と思われる方法により実施することになるから,所によってはその作業工程が実施されない作物も出て来る可能性がある。したがって,この作業工程は栽培されている作物ごとにそれぞれある確率を伴って実施されるものと考えられる。
 この実施確率はおのおのの作物によって,また,何回目の作業かという作業回数によっても異るであろうが,ここでは,それらには無関係な一定値Pであると仮定する。
 さて,r_jの値の大きい品種のみを栽培すると,完熟に時間が掛り過ぎ,初期の需要に応じ切れないし,一方この値の小さい品種のみ栽培すると,早い時期に完熟してしまい,供給の方が需要を上廻って市場価値が下ったり,保管料が嵩んで不経済になることも考えられる。さらに,生鮮食料品の場合などは腐敗などの現象が起きて商品価値が零になってしまい,生産者が大打撃を受けるなとになるかもしれない。そこで,いろいろの品種をとり混ぜて栽培し,いつでも一定の供給料を確保できる方式がないものか考察してみた。なお,品種による栽培の難易差や栽培に要する費用の差,さらに,製品の品種による価格の差異等はないものとする。また,この作物は四季を問わず栽培でき,需要も年間を通じて変化ないものと仮定する。品種A_jの必要作業工程数r_jも任意の自然数でよいが,問題を簡単にするため,r_j=j(1,2,…,S)として扱うことにする。