島根大学教育学部紀要. 自然科学

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島根大学教育学部紀要. 自然科学 20
1986-12-25 発行

イオンと溶媒の相互作用に関する研究(II) : 単独イオンの溶媒間移行自由エネルギー

Studies on lon-Solvent Interactions(II) : Free Energies of Transfer of Single lons
坂本 一光
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内容記述(抄録等)
 イオン−溶媒間相互作用,すなわち,イオンの溶媒和現象は溶媒の酸塩基的性質と密接に関連している。したがって,前報でも述べたように,電解質のイオン会合平衡や酸塩基電離平衡などに与える溶媒の影響には著しいものがある。このようなイオン−溶媒間相互作用の溶媒による差異を定量的に解明することは,たとえば異なる溶媒中に等しい濃度で存在する個々の溶質の反応性の違いを明らかにすることであり,またそのことによって種々の化学反応に対する溶媒効果を定量的に説明したり,あるいは予測しようということである。異なる溶媒中でのイオンの溶媒和エネルギーを比較するとき,イオンの溶媒間移行自由エネルギーという尺度が使われる。これは,酸塩基,酸化還元,イオン会合,錯形成および有機合成反応などの基礎から応用までを合む広範な分野で,今日まで急速に発展してきた非水溶液の化学を統一的に理解するうえで非常に重要な視点を与えるものである。本報では,1970~80年代にかけて大きく進展したイオンの溶媒間移行自由エネルギーに関する研究について概説する。