島根大学教育学部紀要. 自然科学

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島根大学教育学部紀要. 自然科学 18
1984-12-25 発行

螢光燈の照度を測定する学生実験 : 逆2乗則をめぐって

Measurements of Illunrinance Due to Illumination from Fluorescent Lamps Through Student Experiments : Concerning Inverse-squre Law
高橋 成和
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内容記述(抄録等)
 物理を初めて学ぶ学生・生徒の大半は,その概念を構築し,法則性を獲得しようとするとき,関運ある事項・内容をも個別に認知することに努力を払ってしまう。しかし,このことは多数のそれらを到底消化しきれず,思考の混乱に落ち入り,挙句のはてに物理をきらいになる結果を生んでいる。いわゆる物理は理解し難いもの,ときめつけかねない。
 学習者が新しい概念を獲得していく過程は,頭脳に存在する既得概念との照合,それらを連結するリンクの切断,新概念の挿入,全体の再編成を通して主に形成されるという。この照合に際して,ドゥンカーが述べている思考対象を別の観点から見直すことは有効であろうし,また湯川がいう類推の働き,あるいは異類性を踏まえて類似性を洞察することも学習を効果的かつ容易にするであろう。自然は,その究極において単純さをもち,そこから多岐に亘る現象の微妙な細い違いを醸し出す。この意味で自然は調和的であり,その斉一性に対して人類の抱く審美感が類推を生み,この働きで問題が解明されていく。このことは,多くの科学者が確信し,実感していることといっても過言ではなかろう。このとき,中核となる既得あるいは先行概念に,実験・観察のような経験的活動を通し,直観的イメージをもって獲得したものを据えるのも一方策であろう。すなわち,この活動に触発されて学習の進展がみられるのではなかろうか。
 ここでは,学生実験について,一つの概念を形成するという従来の視点から,物理の幾つかの分野に形態を異にして存在する現象ないし概念・法則性を形式的に統一して,理解を深めることに役立てるという新しい視点に立った課題と指導の方針を述べる。このことを,物理を学習する初期に指導しておくことは,個別に学んできた,あるいはこれから学ぶであろう内容に整理の道標を与え,学習内容を一貫して理解する補助となろう。さすれば法則ないし概念を獲得する学習が容易になり,それらの定着もより確実になるに違いない。