本研究は,タクシー乗務員の始業~終業における諸反応を比較し,自動車運転による身心機能におよぼす影響(乗務員の勤務が客待ち・出勤・客待ち,といった断続的な形でおこなわれた場合)を分析検討するために行なわれた。
被験者にはタクシー乗務員97名をあて,始業時と終業時において ①フリッカー値 ②単純反応,複雑反応時間 ③眩惑回復視力を測定した。
その結果,被験者が測定当日走行した距離程度(平均164.5粁)を13時間の拘束労働時間内に断続的に走行する限り,それぞれの反応に,始業時~終業時において有意な差をみとめる程の変化は生じなかった。
また,フリッカー値の変化の多少,当日の走行距離の大少について比較してみても心身機能において顕著な差は認めえなかった。
しかし乍ら,これらの事実は,トライバーに一日の労働の負荷が全くかからないとみるべきではなく,むしろ始業時における身心機能が無疲労・最高の状態でないと考えるべきであり,この事実は筆者の以前行なった研究結果からもいいうる。従って始業直後におよび走行時以外の拘束労働時間のすごさせ方に安全管理上配慮すべき問題点がひそんでいるといえよう。