島根大学教育学部紀要. 人文・社会科学

ダウンロード数 : ?
島根大学教育学部紀要. 人文・社会科学 25
1991-12-25 発行

岡山県西部地域市町村議会議員の研究

The Study of Councilmen in the Western Okayama Prefecture
中川 政樹
小林 悟
ファイル
内容記述(抄録等)
 本稿の目的は,市町村議会議員の社会的属性および地域の抱える問題に対する意識・行動に焦点を当て,その地域特性やメカニズムを明らかにすることにある。
 わが国におげる地方自治は,経済発展の高度化に伴って中央との相互依存関係を深め,国会議員もまた,「地域代表」の役割を大きく果たすようになった。このことは議員の系列化を助長し,市町村議会議員もその重要な構成員となり,上級議員との運携を深めていった。しかし,それら上級議員が政党色を前面に打ち出して選挙に挑むのに対し,市町村議会議員の場合,党公認・推薦で選挙に出馬する例は少ない。この傾向は,自民党所属の議員に顕著にあらわれている。その原因としては,地方では政党に所属しているかどうかというよりも,むしろ地域の利益代表としての性格が重視されていることが考えられる。そのため党公認・推薦といった肩書きは重要性をもたなかったり,時にはマイナスの要因になったりする。
 こうした市町村議会議員の性格は,農村から都市化していくにしたがって変化し,彼らの意識は地域離れしていくことが考えられる、また,かれらの意識には地域による特性があると考えられる。
 こうした疑問を明らかにするために,愛知県・大阪府・鳥取県・岡山県・神奈川県で行われた先行調査を参考にして市町村議会議員を対象とする調査を行い,その結果をふまえて,市町村議会議員の意識および行動に関する特性を中心に,市部・郡部間および地域間の比較分析を行った。
 調査においては,次のような内容の項目を設定した。
 1.議員の社会的属性(6項目)
 2.議員のキャリア(4項目)
 3.住民や支持者との接触(15項目)
 4.地域の問題に対する意識と行動(3項目)
 5.行政機関等との折衝(1項目)
 6.政策決定(5項目)
 7.議員の要望(2項目)
 これらの調査項目の作成においては,先に挙げた5府県で行われた先行調査を参考にした。
 今回の調査対象地域は,岡山県西部の6市19町2村の計27の自治体である。調査地域として岡山県西部を選んだのは以下の理由からである。①地域の北部と南部における人口,経済等の地域間格差が大きく,議員の意識に何らかの違いが生じているのではないかと考えられること,②地形が中国山地の山間部・吉備高原部・平野部・瀬戸内海沿岸部と変化に富んでおり,議員の意識の上で何らかの特色を生む要因になっていると考えられること,③この地域は,県東部とは対照的に,江戸時代に小藩や天領が混在していた地域であったため,倉敷市・笠岡市・高梁市・新見市といった地域の一部分を影響圏にもつ都市がいくつか存在し,その都市圏ごとに地域の特性が生じる要因になっていると考えられること,④人口規模・予算規模の類似した自治体が地域内にいくつかあり,比較する条件が良好であることなどである。