島根大学教育学部紀要. 人文・社会科学

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島根大学教育学部紀要. 人文・社会科学 16
1982-12-25 発行

道法を生ず : 道法思想の展開

Law was Born from Tao
浅野 裕一
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内容記述(抄録等)
 一九七三年、長沙馬王堆漢墓より多数の古佚書が発見されたが、その後の研究によって、その中の『経法』『十六経』『称』『道原』は、散佚して久しかった黄老道関係の文献であることが明らかとなった。そこで『経法』等四種の古佚書は、これまで実体が不明であった黄老道の内容を解明する手懸りとして、重要な意義を持つのであるが、また一方では、『経法』道法篇に「道、法を生ず」との主張が見られることから、戦国期に道法思想と称すべき学派が存在したのではないか、との新たな問題も提起されてきている。
 この道法思想なる呼称は、広義には道家と法家の折衷を、狭義には道と法との結合を指すものとして使用されている。ただし、道家や法家、道や法と云った概念は、それ自体、内容が極めて広範囲に亙るため、道法思想の定義もまた、研究者の視点に応じて相当の幅で揺れざるを得ない。従って、道法思想の展開を辿ろうとする場合、先ず道法思想の定義そのものを明確に固定して置かないことには、論点が漢然としたままに終る恐れがある。
 そこで本稿に於ては、『経法』に見られる形態を一応の基準として、老子の道を実定法の根拠に据える思考と、老子の道を形名参同,の根拠に据える思考、の両者を兼備する思想を、狭義の道法思想と定義した上で、道法思想の展開の跡を辿ってみることとしたい。