島根大学教育学部紀要. 人文・社会科学

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島根大学教育学部紀要. 人文・社会科学 16
1982-12-25 発行

ライフサイクルにおける女子賃金(I)

The Temalis Wages in the Life Cycle(I)
山本 眞一
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内容記述(抄録等)
 1975年7月に国際婦人年・メキシコ大会で,「婦人の平等と開発及び平和に対する婦人の貢献に関するメキシコ宣言が採択された。そして同じ年のILO総会での「婦人労働者の機会及び待遇の均等に関する宣言」,そして1979年の第3回国連総会においては,「婦人に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」が採択された。そして日本は,1980年のデンマークで開かれた国連婦人の十年中間年世界会議での「婦人に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」に署名を行った。この条約はその第3部第11条で,「……締約国は男女平等を基礎として……雇用の分野における婦人に対する差別を撤廃する為のすべての適当な措置をとる。」としている所である。
 しかし,日本においては先般(1982年)の5月8日に「男女平等の具体的な姿」としてのガイドラインが,労働大臣の私的諮問機関である婦人少年問題審議会婦人労働部会によって示された。その内容は男女平等法の制定へはほど遠いものである。世界的な男女平等法の実現の中にあって,日本における雇用面での平等は大きく立遅れているのが現状である。
 今日,日本の被用者全体に占める女子の割合は34.1%(1980年)であり,年々その割合は増加している。それにもかかわらず日本の女子賃金は単身者,あるいは家計補助的賃金といわれるところの低い水準である。例えばその低さを賃金額でみれば,男女の賃金の59.4%(所定内給与,1980年)でしかない。そしてそのことが様々な形で生活困難とか生活障害,生活破壊を生じさせる主要な一因となっている。この小論においては,狭義の賃金としての女子賃金の現状をライフ・サイクルから検討してみたい。