島根大学教育学部紀要. 人文・社会科学

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島根大学教育学部紀要. 人文・社会科学 10
1976-12-25 発行

つめえり学生服に対するイメージに及ぼす要因について

The Factors on the Image for a Closed Buttoned School Uniform
松浦 道子
ファイル
内容記述(抄録等)
 現在,ほとんどの中学校や高等学校の制服あるいは標準服として,男子生徒によって着用されているつめえり学生服は,明治20年代から軍服を模して採用されてきたものである。このようなつめえり学生服が,制服として生徒の識別,統一を主な目的として着用されてきたのなら,他の衣服と同様に社会状況によって大きく変化してきた筈である。しかし実際には,社会の変化や機能性の問題などが指摘されながらも,100年近く経た今日なお,色・デザインなど基本的には全く変化していない。したがって,この問題に関しては身体的要因よりもむしろ,社会的要因や心理的要因が強く作用しているものと思われる。そこで,衣生活の自由化および多様化傾向の著しい現在,つめえり学生服が生徒にどのように受けとめられているのかというイメージと,イメージに及ぼす要因を明らかにすることは非常に意義があることと思われる。
 衣服の中でも,制服は特に社会性の強いものである。そのため,規定されている色やデザインは,着用者に対して特殊で多様な心理的諸反応をもたらす。この特殊な心理的諸反応は、決して独立的なものではなく,お互い密接な関連を保ちつつ作用しあっていると考えられる。中でも,イメージは人間のダイナミックな心理のプロセスの産物であり,知覚や思考それ自体ではないが,それらとわかちがたくとけあっており,人間の持つ概念,判断、好悪や態度をもたらす総体を示す概念であるとみなされている。また,イメージ用語として選定できる形容詞対は内包的な意味を表現するため,つめえり学生服が、生徒にどのように受けとめられているかという流動的な感情値を計る尺度として,特に適しているものと思われる。よって,本研究では、つめえり学生服に対するイメ一ジと,このイメージに影響を及ぽす嗜好や着心地,色とデザインに対する評定,衣服の自由化に対する態度などを明らかにし,さらに各概念間の関連を性や年令による違いによって検討することを目的とした。