島根大学教育学部美術教育研究室(以下,本研究室)は学部改組により平成10年度から学校教育教員養成課程美術教育選修と生涯学習課程造形美術コースの2つの選修・コースに定員を持つようになった。前者は学校教育における美術教育の担い手(小学校教員を中心に),後者は造形美術に関する深い造詣(知識と技能)を獲得した社会(教育)への従事者を育成することを目的としている。
教育学部における人材養成として本研究室が準備しているカリキュラムとしては,前者に対して美術の専門内容(絵画,彫刻,デザイン,工芸,美術理論・美術史)に加えて「教科教育法」,そして教育臨床系科目としての「教育実習」及びその「事前事後指導」があり,後者には教育学部における教育という理念をもとに前者よりもさらに高度な専門内容に加え,「生涯美術指導論I・II・演習」と「造形美術社会実習」を準備している。
本稿では後者の生涯学習課程造形美術コースが社会教育の担い手を養成するために実施する「造形美術社会実習」を中心にその事前事後指導となる「生涯美術指導論I・II」について報告するとともに,社会教育における美術教育の可能性について考察するものである。