陸上競技は,人間の生活・生存活動のために必要な,最も基礎的な運動を最も単純な形式においてスポーツ化したもので,流行にあまり左右されない最も素朴な運動としてとらえることができ,また,より速く,より高く,より遠くへ,といった人間の基礎的運動能力そのものを競い合うための,最も単純化された運動ということができる。
砲丸投は,競技者の資質(体格・体力など)がすぐれていることが有利であるといわれており,陸上競技の種目の中でも一見して単純な運動にみえるが,その技術の習得は決して簡単ではない。砲丸投は,走や跳の競技のように,自分の身体だけを動かすことによって成り立つ運動ではなく,砲丸という物体を自分の身体とともに動かし,なおかつ物体だけをより遠くへ投射するという競技特性があるため,技術を身につけるのに比較的長い時間を要するといわれている。
砲丸投の投てき距離は,力学的にみると砲丸が手から離れるときの速度,方向,それに高さによって決まる。そして,効果的な投てき技術とは,全身の力をできるだけ長い距離にわたって作用させることである。砲丸投は,初めて砲丸を手にする人でも投げることができるが,より効果的な投てき技術でもって投げるには,正しい知識を理解し,基礎的な練習を十分繰り返し行うことが大切である。
西藤等,浜田等は,熟練者と未熟練者を比較し,大谷等は利き手による砲丸投と非利き手による砲丸投を比較して動作の熟練について考察しているが,学習により熟練度を増した場合にどのように変化して技術を身につけていくかについて触れた報告は少ない。
そこで,この研究では,砲丸投を被験者に一定期間学習させ,それによって学習後に砲丸投の動きや記録にどのような変化が生じるかを究明しようとした。