島根大学教育学部紀要. 教育科学

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島根大学教育学部紀要. 教育科学 14
1980-12-25 発行

学習の体系

The System of Learning
盛政 貞人
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内容記述(抄録等)
 「学習」について,それを体系的に把握することは,学問研究として重要であるばかりでなく,その実践においても必要なことと思われる。学問の場合にはその研究が徐々にあるいは,分化して進むことがゆるされても,実践の場合にはその総合的把握が日々要求されるともいえよう。しかし,その体系的把握には,観点の差異があり,ことに主観的な立場からの把握上の差異は大きいといえよう。そこで筆者は長年にわたって,その把握を客観的・科学的に進めることによって,普遍的な把握に少しでも接近しようと希い,かつ,試みてきている。
 そして,その体系の構造は,その上位(あるいは基本構造)においては,できるだけ単純・簡潔なものとして,下位に至るにしたがって系統的に展開していくようなものとしてとらえたい。
 このような観点に立って,筆者は,これまで,その体系に関してつぎのように把握してきているので,「学習または教育の全人的目的は,人間(個)の内的な,遺伝的なもののよりよい発現をはかり,外的な自然的・社会的・文化的環境に適応し(環境順応),または,自然的・社会的・文化的環境を適応させ(環境改善)ながら, −個人と環境と適応・調和しながら− 自他ともに幸福な生活を営むことができるための知識や技術や態度などの諸能力を身につけることである。いいかえれば,そのような人間形成,あるいは,人間の成長・発達をはかることである。」
「学習の方法。機能の根幹は,
(a)人間が進化の過程において獲得してきている形質による進化的学習機能
(b)人間が文化の形成の過程において習得してきている文化的学習機能
(C)身心の発達段階および態度などに基盤がおかれるものとである。」
 これらと,それらに関係をもつと考えられる,教育に関しての主要事項にわたっての,一つの最も代表的な把握の仕方で,かつ,要約的・網羅的に述べられていると思われる勝田守一他三氏編の岩波小辞典「教育」をはじめとする,引用文献に記載のいく冊かの書籍の記述内容を照合する形でとり出して体系的に大観いたしたい。そして,できれば,筆者の学習の体系的把握の研究 −普遍性の基礎づけと,今後の改善・発展− に役立つばかりでなく,これをお読み戴く方々に何かの参考にして戴けることを希いたい。