島根農科大学研究報告

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島根農科大学研究報告 10
1962-03-31 発行

林地価格に関する一考察

Contribution to the Theory of Prices of Forest Land
北川 泉
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内容記述(抄録等)
 土地は,本来自然に存在する物質的生産力の一つであるが,土地改良などのように土地に投入,合体せしめられた固定資本部分を除いて,その「本源的」な部分にかんしていえぱ,土地そのものは天然のままの自然力であり,人間労働の生産物ではなく,したがってまた資本によって生産しえないものである。このような意味で土地は価値をも,また生産価格をももちえないはずである。
 しかしながら,空気などとことなり,土地は独占することのできる自然力である。しかも,土地は現実に商品として売買せられ,市場で一定の価格を形成する。この場合,一定の土地を所有することによって,一定期間内に連続的に地代がくりかえし実現されると,利子が貨幣資本の一時的譲渡の価格とみなされるように,土地自体が一つの「資本」とみなされ,その土地の資本価値の産物として,地代が認識される。
 したがって,「地代を利子とみなしての資本化(キヤピタライズ)が土地価格であり」それゆえ,原則的にいえば土地価格は,「その土地を所有することによって定期的,反復的に生みだされ,入手される所得金額,すなわち地代を,一般利子率で除した商にひとしい」ということができる。言葉をかえていえぱ,土地価格は,土地という「擬制資本」の価格形態である,ということにほかならない。土地価格(土地所有権の譲渡価格)にかんするこのような規定は一応周知の命題であろう。
 だがしかし,林地の価格を問題にする場合,いったい林地価格というものは,地代をどのように考え,あるいは収益価格をどう考え,どんな利子率によって,どんなふうにキャピタタライズしたものなのか。あるいはまた,はたして,林地価格というものは,地代を一般利子率によって資本還元したという命題だけで,説明しつくせるものなのか。という疑問は当然起こってくるであろう。
 林地価格の研究にかんするかぎり,こうした視角からの分析はほとんどなかったといってよいのではあるまいか。
 そこで,私はまず全国的な視野から林地価格の動向を大観的に把まえたのち,島根県における林地価格水準の検討を行ない,ついで島根県内の4つの町村における実態を手がかりに林地価格形成の意昧を捉まえてみることにしたい。
 なお,この小論で利用する資料は,昭和36年度林野庁より京都大学半田助教授に依託された「林地価格の研究」に筆者も参加させていただき,筆者の担当地域の一部をとりまとめたものである。