島根大学生物資源科学部研究報告

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島根大学生物資源科学部研究報告 1
1996-12-20 発行

汽水湖光合成細菌Rhodobacter sphaeroidesの細胞内アミノ酸プールとアラニンデヒドロゲナーゼ活性

Activity of Alanine Dehydrogenase and Pool of Intracellular Amino Acids in Photosynthetic Bacterium, Rhodobacter sphaeroides Isolated from Brackish Water
宇野 徹
長屋 敦
滝波 弘一
澤 嘉弘
ファイル
内容記述(抄録等)
Rhodobacter sphaeroides NII2 was isolated near here from lake Nakaumi, and now is expected to exhibit some novel characteristics., Under heterophototrophic-anaerobic condition, the strain grows well assimilating <NH_4>^+. In the intracelluar amino acid pool of the grown cells, The particular amount of L-alanine was observed and no another amino acid. L-alanine was considered to be biosynthesized directly from <NH_4>^+ and pyruvate which was the end product of glycolytic pathway of glucose. This was confirmed in the obtained results that alanine dehydrogenase aminating activity was determined in the cell-free extract of Rb. sphaeroides grown anaerobically. The enzyme activity was remarkably higher in light-grown cells than in dark-grown cells. The light illumination seems to promate the formation of L-alanine dehydrogenase. For ammonia assimilation, L-alanine dehydrogenase could be apparently the primar enzyme in the phototorophlc bacterium, Rb. sphaeroides.

日本海に通じている中海と宍道湖はNaCl濃度0.02~3.0%の汽水湖である.その大部分の水深は3~7mであって,太陽光の到達する範囲にある.この底泥より,多数の微生物が採集分離され研究室に保存されている.この中にRhodobacter sphaeroidesと同定された細菌があり,光照射下で<NO_3>^-を還元してN_2ガスを発生する特性を有していた.
光合成細菌は一般植物とは異なり,光照射下でCO_2を同化固定することが出来ない.そのため,生育には炭素源として有機化合物を与えなければならない.しかしながら光エネルギーを利用することが出来るので、有機化合物の代謝分解は嫌気条件下で効率よく行われる.また一方では,Rb. sphaeroidesの光脱窒に見られるように,光合成細菌は窒素化合物の多様な代謝分解能も持っている.
光合成細菌の<NH_4>^+の取り込み機構についてはいくつかの報告があり,現在までのところGS-GOGAT(Glu+<NH_4>^+→Gln,Gln+2-OG→2Glu)系が普遍的であると考えられている.詳しく調べられているRhodobacter capsul atusではGDH (20G+<NH_4>^+→Glu)活性はなく, GS-GOGATによって<NH_4>^+は取り込まれるが,<NH_4>^+濃度が高いときには,L-alanine dehydrogenase(AlaDH)活性を示すことが報告されている.この高濃度<NH_4>^+の作用は,光合成細菌ばかりでなく,Arthrobacter fluorecensでも見出されている.
光合成細菌の<NH_4>^+の取り込み機構についてはいくつかの報告があり,現在までのところGS-GOGAT(Glu+<NH_4>^+→Gln,Gln+2-OG→2Glu)系が普遍的であると考えられている.詳しく調べられているRhodobacter capsul atusではGDH (20G+<NH_4>^+→Glu)活性はなく, GS-GOGATによって<NH_4>^+は取り込まれるが,<NH_4>^+濃度が高いときには,L-alanine dehydrogenase(AlaDH)活性を示すことが報告されている.この高濃度<NH_4>^+の作用は,光合成細菌ばかりでなく,Arthrobacter fluorecensでも見出されている.
ところがRb. sphaeroidesではまだアンモニアがどのように取り込まれるのかは明らかにされていない.本研究室のRb. sphaeroides NII2では,光・嫌気培養で細胞内アミノ酸プールのアラニンが特異的に高濃度となることが見出されている.このアラニン生成がAlaDHによるものかを確認し,さらに光の作用,硝酸呼吸との関係を調べた.