島根県の昆虫目録(I) : 鱗翅目(蝶)

　島根県津和野において第5回日本学生科学賞島根県展第14回科学作品展が開催されるに先立ち1961年10月4・5日にそれの審査会が行なわれたが，この時たまたまそれら作品の中の昆虫標本を詳しく見る機会を得た。このように熱心に採集された標本も一部を除いては記録も標本も残らずに失われて行くことは明かである。しかしこれらを正確に記録に留めて行くとすれぱ，数年を経ずして島根県の昆虫の全体をほぽつかむことが出来るものと思われる。また現在まで島根県内で採集された昆虫の記録は相当あるが，これらを一括レた目録のようなものは未だに発表されていない。たとえ不完全でも一応まとまったものがあれぱ，何かにつけて便利であり，なおそれを補正することによって完全なものを作りだす足がかりにもなる。種々考えた末，急にこの目録を残すことを思いついたのであるが，いざかかって見ると最も同好者が多く，従って採集の記録の多いチョウ類においてすら，完全に調ぺあげることが困難なことを痛感した。今後も大いに補正を要するものと考えている。
　この目録は大竹昭郎，柏木洋吉，三浦正，筆者及び島根県立農林専門学校，島根農科大学，島根県立保育専門学院の設立以来の学生有志の採集したものと岡本幸次郎その他の前記作品展に出品した標本の記録並びに筆者等の手元にある文献にもとずいて記されたものである。
　以上の採集者や今まで度々筆者等を励まして下さった安江安宜，井上貞信等の諸氏に深甚の謝意を表する。
　この目録中の説明にある数字（gothic）は成虫の採集または発見された月を示し，特別の場合を除いては，発生地は市または郡の名で示すが，独立したよく知られている山の場合などはその山の名を記した。なお今後の調査などの便を考慮し，多発生地など若干の説明を加えた。