天然水中の微量亜鉛およぴ銅の原子吸光光度定量法を確立した。濃縮操作法としては,ピロリジンジチオカルバミン酸アンモニウム(APDC)一メチルイソブチルケトン(MIBK)による溶媒抽出法を採用した。MIBKの水溶液への溶解度は,水溶液の塩素量に応じて変化をし,溶解度と塩素量の間には負の相関がみられた。このため塩素量の異なった天然水を試水とした場合,その塩素量の違いによるMIBKの溶解度の変化は,定量の際に誤差の原因となる。本法ではこの誤差を防くために,一定量の試水をあらかじめMIBKで飽和した後,その飽和溶液に一定量のMIBKを添加した。この操作により試水の塩素量の影響を受けることなく抽出後のMIBK相の得量は一定となり,再現性のある定量結果が得られた。本法によって塩素量の異なった天然水中の微量亜鉛およぴ銅を同一の検量線を用いて定量することができる。