磁性体における磁気モーメント(簡単のために以下スピンと呼ぶ)の秩序配列の新しい型として最近スピンのらせん構造が見出された。現在は人によって helical,spiral,screw などの名で呼んでおり一定していないが,結晶格子を,ある結晶面に平行な層状の構造と考えたとき,各面内のスピンはすべて平行に並び,隣り合った面内のスピンは一定の角度をなして次々に回転しているのがらせん構造である。こういう配列をなす結晶で中性子線回折を行なうと,通常の Bragg 反射(hkl)のほかに,らせん軸に対応する方向の前後に,面間の回転角に相当する距離だけずれた satellite(hkl)^± が現われるので,その解析かららせん配列の構造が決定できる。
Yoshimori は,MnO_2(rutile 構造)の磁気的性質およぴ Erickson の中性子線回折のデータを説明するために,c 軸を回転軸としたらせん構造を理論的に導びいたが,Herpin,Meriel,Villain は中性子線回折によって MnAu_2(tetragonal)のらせん構造を見出し,その他多くの物質にらせん構造が見出されたが,特に注目されているのは,Oak Ridge の Wilkinson,Koehler,Wollan,Cable らの中性子線回折グループによって明らかにされた稀土類金属の Gd からあとの Tb,Dy,Ho,Er,Tm の単結晶のスピン配列のらせん構造またはそれに類似した構造である。これらの金属はいずれも六方最密格子をもち,多結晶についての磁気的性質や比熱の測定から,低温では強磁性で温度が上昇すると反強磁性から常磁性へと転移を示すと考えられていたが,単結晶による中性子線回折の結果は,反強磁性と見なされていた温度領域で hexagonal の c 軸を軸とするらせん構造をもつと思われる。このような六方結晶におけるスピンのらせん構造の可能性や異方性エネルギー,磁場による変化を考える。
The helical and related spin configurations have heen found experimentally in a number of materials. The magnetic ordering in the heavy rare earth metals takes several magnetic phases, and the phase which appears at the highest T shows a helical spin structure or longitudinal spin wave. In this paper, the possibilities of helical and modulated spin configurations in such hexagonal close-packed structures are discussed, assuming the anisotropy energy and the exchange interaction to the third-nearest-neighbor layer atoms for the linear chain model. The field dependence of the helical structure are also calculated in weak field case.