本稿の構成は以下の通りである。第一節において、相続契約とそれに関する両家の解釈について考量する。第二節において、ロシツの当主ルーペルトとその妻オイスターへの性格と発想を分析する。第三節において、ヴァルヴァントの当主ジュルヴェスターとその妻ゲルトルーデの性格と発想を分析する。第四節において、オトカールとアグネスが不信を克服するプロセスと二つの価値について考究する。第五節において、両家の使者たちの役割と死について論じる。第六節において、アグネスとオトカールの婚約の秘儀と着衣交換の意味、父親たちによる刺殺について論じる。第七節において、クライストが好む樫の木の形象について論じ、作品世界を総合的に考察する。