フォースタ(E.M.Forster)の著名な「小説の諸相」(Ascepts of the Novel)に於けるウエセクス小説の構成論については充分に承認し得ない所があるが、それに対するドブレ(Bonamy Dobree)の論理整然たる修正論(The Lamp and the Lute,1929)を読んで興味を覚えたこと、更にミュア(Edwin Muir)が「小説の構造」(The structure of the Movel)に於てそれに触れ、且つ劇的小説の特長を明快に分析しているのを見て、ウエセクス小説の戯曲的精神を更に精細に検討したいと思つたことがこの小論を認ためた動機である。ここではウエセクス小説の戯曲的要素を、主に劇的構成、人物、情緒、場面及び象徴的精神より考察してみることにした。