組織は一般に「二人以上の人びとの意識的に統括された活動や諸力の体系」と定義されているが,この場合組織成員の活動や諸カをその組織のもっている目的の達成にむかって意識的に統括する仕方としては,成員の全部が等しい力をもって統括ないし方向づけに参加する,いわば直接民主主義的な方法もありうるが,普通は成員のなかの特定個人あるいは少数の人びとの影響力によって成員の活動や努カを時機と方向とにおいて統括することが行なわれる。この後者の現象は,合理的な配慮にもとづいて構成され,長かれ短かかれ存続するフオーマルな組織ではいうまでもなく,自生的につくられるインフォーマルな組織にも,さらには臨時的ないし突発的な集団行動(組織的および非組織的)にもひとしく存在する現象である。J.A.C.Brownがキャンプ旅行をしている人びとは皆から最も好かれて人気のある人を指導者として組織化されているかもしれないが,もしその一隊が山の中で道を失なったならば,その地方の知識をもち他の者を基地に連れもどす能カをもった人が指導者として前面に出てくる,といっているのは臨時的な集団行動における諸活動の統合である。このように複数の人間の活動や努力を一定の目標の達成にむかって統括するときリーダーシップが成立する。
企業ももちろんその例外ではない。企業は企業目的を達成するために人的要素と物的要素とを合理的に構成した組織(going concern)であり,その意味では他の永続的な組織とかわるところはない。しかし企業は資本主義の諸法則に支配される目的構成体として独自な性格をもっている。ただ単に人びとの協働体系であるばかりでなく,それが資本制営利原則に支配されるところから,ピジネス・リーダーシッブは特殊な性格と課題をもっている。本稿では企業の構造からみたその特殊性と今日的課題を中心に考察してみたい。