島根大学文理学部紀要. 文学科編

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島根大学文理学部紀要. 文学科編 11
1977-12-27 発行

古代ドイツ語の時制 : 過去について

Uber die Vergangenheitsform im Altdeutscher
Ojima, Kazuyoshi
File
a008011h014.pdf 825 KB ( 限定公開 )
Description
古代ゲルマン語系本来の時称形としては,Prasensと単独形のPrateritumの二種類しかなく,現代ドイツ語で使用されている他の4つの時称形は古典語(ラテン語等)を翻訳する際に,必要にせままれて種々の動詞(助動詞)の助けをかりて創り出されたものである。
Prateritumは過去に起った一切の出来事,Prasensは現在における出来事と将来に生ずるであろう事柄を表現するものであり,これがもともと自然な姿であると思われる。古代トイツ語の単独形の貴重な文献としてHildebrandsliedをあげることができる。この詩は9世紀の初めに,偶然祈祷書に書かれたものであり,詩の成立年代は8世紀の中期よりも古いということである。その動詞の時称形を調べると,複合時称形を全然使用していなく,Prasensと単独形のPrateritumのみで構成されている。この詩では単独形のをもって,過去の一切,即ちPrateritum,Perfekt,Plusquamperfektの意味を表現している。
HildebrandsliedとHeliand(この詩の中にはもうすでにPerfekt,Plusquamperfektが入りこんできているが,言語・韻律等の古さは,ほぼ同じくらいである)を中心としてPrateritumに関する用法と,そこから出てくる複合時称について述べていきたい。