本研究は、互いに異なる方言を使用する話者間の会話場面において、会話の相手が方言(土佐方言)を使用する場合と共通語を使用する場合を設け、話者が出雲方言を使用する場合と共通語を使用する場合で、話者の印象がどのようになるのかを検討した。島根大学生44 名が実験に参加し、相手も話者も共通語を話す場合、相手が共通語・話者が出雲方言を話す場合、相手が土佐方言・話者が共通語を話す場合、相手が土佐方言・話者が出雲方言を話す場合の4 群に分かれて、話者に対する印象を評定した。その結果、出雲方言を話す話者は共通語を話す話者よりも、人柄が良いという印象を持たれ、対人的な魅力も高いが、知性については低く見積もられた印象を持たれる傾向があった。また、相手が土佐方言を話す場合に、出雲方言話者は共通語話者よりも人柄が良く、対人魅力があるが、知性を低く見積もられるという上記の傾向が見られ、相手が共通語を話す場合には、出雲方言話者と共通語話者の違いは小さかった。会話のダイナミクスにおいて、相手が心的距離を縮めようとすることに応じるかどうかという観点から、これらの印象形成のメカニズムが考察された。