Memoirs of the Faculty of Education, Shimane University. Natural science

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Memoirs of the Faculty of Education, Shimane University. Natural science 11
1977-12-25 発行

ロッシェル塩結晶のX線トポグラフによる研究

X-Ray Topographic Study on Rochelle Salt Crystals
Sakami, Jiro
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Description
 X線トポグラフィ(X線回折顕微法)は,X線の回折効果を利用して結晶の不完全性を調べる方法で,結晶内に存在する転位その他の欠陥やひずみなどの分布が直接観察できるので,単結晶の研究には極めて有用な方法とされている。
 筆者は,ロッシェル塩結晶のピエゾラインについて研究してきたが,前回の研究によって,その成因は結晶の局所的な完全性にあるということが,ほぼ明らかになった。即ち,ロッシェル塩の結晶は一般に転位,"すだれ"などの多くの欠陥を含み,大部分は不完全なものであるが,局所的には殆んど完全に近い小領域が存在していると考えられる。水で僅かに濡らした瀘紙で繰り返し研摩することによって測られたこの完全に近い小領域の厚みは,10μm~1000μm位であることが分ったが,この小領域がetchingなどによって表面に出ると,この部分が外部から与えられた高周波電場によってよく励振され,もし励振電場の周波数が,その部分での厚みすべり振動の周波数と一致しておれば,ここから厚み方向に定在波が立ち,これが励振電場のエネルギーを共鳴吸収してピエゾラインを生ずるものと思われる。(このよく励振され,励振電場のエネルギーを共鳴吸収してピエゾラインを生じさせている,完全に近い小領域を"共鳴領域"と呼ぶ)
 結晶内の不完全性は,X線トポグラフ(X線回折顕微写真)の中に白黒のコントラストとして直接見ることができるので,今回の研究は,このX線トポグラフによって共鳴点附近の結晶構造の特徴を捕え,前回までに得られたピエゾラインの成因についての考えを,一層明確なものにするために行なわれた。

NCID
AN00107941