本稿は1997~’98年に国際学術研究として「環日本海における過疎問題の比較調査−韓国・中国・日本を中心に−」のテーマに基づいた科学研究費による研究報告の一部である。本研究は北川泉島根大学名誉教授を研究代表者とする研究グループの2回にわたる調査によって得られた成果を基に,筆者の担当部分を報告するものである。
本稿の分析対象とした地域は,韓国南東部の慶尚北道と慶尚南道の中山間地域である。過疎・中山間地域問題は,日本のみならず韓国,中国にも共通してある。本調査研究の目的は,(1)韓国,中国,日本の三国に共通する過疎・山村問題の克服と環境維持機能や資源利用を満足に実現しうる均衡ある各国国土の発展方策を明らかにすること,(2)その成果を日本のあるべき政策に反映させることによって,我が国の過疎・山村問題解決に貢献すること,である。これに対し,筆者は,1960年代以降の韓国農村の変化を歴史的に分析することによって,問題点に接近していき,目的の一端を果たしたいと思う。