本稿は,先年来紹介している<現観荘厳論釈の梵文写本>の一部であり,その第一章に相当するものである。
本章の写本は完全ではなく,一葉分,正確には第六葉裏と第七葉表の欠落が認められる。この欠落個所は内容的には第42偈の注釈部分から第53偈の注釈部分までに相当している。そして,この個所には,チベット訳テキストを参看すると,Aloka と文字通りに対応していない部分が多く含まれており,しかも Vivrti にのみあって Aloka にない部分(たとえば jnana-sambhara に関する偈など)が含まれている。
第一章の約1/5にも当たる部分が欠けているということのみならず,上記のような事情からしても,この欠落は当論釈の研究上大きな損失といわなければならない。
本稿では当該欠落個所を指摘するにとどめて,梵文を復元することはしなかった。当該個所の内容および Aloka の対応個所などについては拙著を参照せられたい。
なお文中の不鮮明な個所などについては従来と同様の手続きを経てこれを補い,そしてそれをイタリックでもって示した。