政治意識研究の一環として,日本に於ける各政党の支持層が,いかなる人生観(広い意味での「社会的性格」)をもつかを探索することが本研究の目的である。
日本人の政治的性格(広義の「社会的性格」)をいくつかの類型にわけて考える研究の代表的なものには,日高(1960),塩原(1962),田中(1964),飽戸(1965)などの研究がある。
日高(1960)は,歴史的,社会的な形成過程から,「庶民的」「臣民的」「市民的」「大衆的」「人民的」の5つの性格型を基本的なものと考えた。
塩原(1962)は「庶民的指向」「市民的指向」「大衆的指向」「前衛的指向」の4つの類型をあげている。
田中(1964)は,日高,塩原に類似の5つの基本型を用いて,自民党員,革新党員,創価学会信者,労働学校生徒,進歩派学生,カソリック信者,高校生の各集団に態度調査を行ない,「革新系集団ほどその態度構造には論理的整序が行なわれ,いわゆるイデオロギー的因子とよべるものがみられるのに対して、保守系集団の態度構造には論理的連関性が少なく,イデオロギーとよべるものはみられないであろう」という仮説を因子分析によって検討している。
飽戸(1965)は,「保守−革新」「関心−無関心」「革新批判−保守批判」の3つの次元を組合わせた類型を,多次元解析から導き出している。
一方,政党支持態度を中心に政治意識を分析しようとする研究には,牧田,林,斉藤(1959)池内(1960),山本,久松(1965),加留部(1966),三宅,木下,間場(1967)などの研究がある。
これら2つの流れを統合的に考えようとする筆者は,現実の政党支持と「社会的性格」の基本的要素である「人生観」との関係を,日高(1960),塩原(1962)の類型を参考にしながら探索しようとするものである。