友人関係について組織的に研究が進められるようになつたのは,Moreno,J.L.らによるソシオメトリー運動以来といつてよい(1)。集団構造に関する多くの知識がソシオメトリック・テストによつて求められたが,また別に集団内の選択行動がいかなる理由でなされるかについても種々究明されてきた。この場合最も多くとられてきたのは,特定の相手を選択する理由を選択者自身に直接尋ねる方法であり,その結果成員間の地理的・物理的距離や,性格特性などが選択行動を規定する要因として取上げられてきた{2)(3)。
しかしかかる記述統計的な追求の仕方からは,選択者が意識している限りの選択動機を捕捉することはできても,さらに進んで現実の友人関係を複雑に規定している諸条件を力動的に解明することはできない。選択行動を力動的に把握してゆこうと思えば,それが集団という一つの場の中で行われる以上,認知過程を媒介として成立する成員間の相互作用と理解し,杜会的場における知覚を問題視し究明してゆかねばならない。最近選択行動について認知的側面の重要性が強調され,social perceptionあるいはsociometric perceptionの語を用いて選択行動と対人的知覚の研究が次々と進められるようになつたのも当然のことである(4)(5)(6)。
社会的場における友人の知覚について,Northway,M.L.and Detweiler,J.は「我々は人を実在としてみるのでなく,我々との関係においてみる」ということ,即ち他人の知覚様式は相手が知覚者に対して持つ価値に依存するという考えのもとに,友人と非友人の知覚の相違を種々の人格特性に関して実証している(7)。彼等が取上げた人格特性は,寛大(generous),明朗快活(cheerful),礼儀(polite)、信頼感(dependable),協調性(cooperative),慎重(considerate),運動(good sport),親切(friendly),正直(honest),ユーモア(humorous)の10項目であり,それぞれの項目の他人についての評定を同じ項目の白己評定と比較し,「自分の友人は自己よりも望ましい人格特性を持つと知覚するが,逆に非友人は自分よりすぐれた特性を持たないと知覚する」と結論づけている、
本研究では,Northwayらの試みたものとほぼ同じ手続きで選択行動と対人的知覚の関係を追試し,友人選択に作用する条件を究明することを目的とするものである