島根大学法文学部紀要. 文学科編

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島根大学法文学部紀要. 文学科編 5 1
1982-12-25 発行

イメージと認知

Imagery and Cognition
松川 順子
ファイル
a003000501h005.pdf 2.31 MB ( 限定公開 )
内容記述(抄録等)
われわれは,かなり以前に経験した出来事でも,その時の情景を後になって思い出すことがある。又,家までの道のりを,途中の商店の様子などを頭に浮かべながら人に説明したりする。浮かんだ像が生き生きしたものであるか,ぼんやりした印象であるかは人によっても,事柄によっても様々であるが,このように,現前の知覚状況に存在しない対象や出来事の具象的な経験が,一般にイメージといわれるものである。その経験は主観的なものである。イメージは視覚的(映像的)なものとして理解されることが多いが,たとえば,ある歌手の特徴のある歌声であるとか,今年のスイカの甘さであるとか他の感覚に結びついた経験でもある。北村(1982)は,したがってイメージは直観的な再生と表現する方がよいかもしれないと述べている。イメージは又,“商品イメージ”というように,もっと漠然とした印象をいう場合にも用いられることがあり,上記のように経験される心的内容を狭義のイメージとして心像と表現することもある。又,イメージをもつということは,われわれが外界との交渉を通して,自らの内に世界を構築している結果であるともいえ,この内的表現全体を指して広く表象ということもある。本稿の目的は,心理学で取り扱われているイメージの問題を中心に,イメージ全般の考察を行うことであるが,主として視覚心像に関するものであり,これを特に断らない限り,イメージとして表現する。又,内的表現一般について述べるときは表象という表現を用いる。