島根大学論集. 自然科学

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島根大学論集. 自然科学 9
1959-02-28 発行

二元系フェライトのマイクロ波共鳴吸収

Microwave Resonance Absorption in Binary Ferrite System
竹本 將
岡 正巳
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内容記述(抄録等)
電気エネルギーの制御,利用及び高速度電子計算機を始めあらゆる種類の電気計測装置に関する近代技術の発展は強磁性材料の研究成果に負う所多大であることは論を俟たない。M^<2+>O・Fe_2O_3なる一般式で表わされ,逆スピネル型の結晶構造を持つフェライト叉は此等フェライトに他の金属を適当な組成で添加した混合フェライトの性能の進歩向上に依つてマイクロ波を含む高周波回路に関する新しい将来が開かれている。商用フェライトは殆どすべての場合多結晶であるが此等多結晶フェライトに関する各種の電気的,磁気的性質を調べ叉相互の関連を比較研究することは実際利用の面から見て重要な問題である。特に材料が磁気共鳴の附近で動作する場合の性質の研究は実際的にも亦理論的にも非常に興味が深い。焼結フェライトに於けるdomain rotation を論ずる場合に単結晶試料と異つている点は一般に次の三項に要約出来るであろう。第一に,焼結結晶粒は各自勝手な方向を向いている。第二に,それ等は coupled oscillator に似た仕方で互に磁気的に相互作用を及ぼし合つている。第三に,各結晶粒の化学的純度,形,大さ,空孔度及び内部応力等が互に異つている為に,材料の磁気的性質は結晶粒毎に違つていると考えられる。此の様な非常に複雑な事情のために,多結晶磁性材料のマイクロ波領域に於ける各種の電気的磁気的特性の mechanism の理論的解明は現在まで殆ど為されていないと云つてよい。
 我々は二元系多結晶フェライトNi_<1-x>Cd_x・Fe_2O_4 の球状試料を,室温に於て,9,700MC及び23,800MC の二つの周波数領域に於て強磁性共鳴の実験を行つた。此の報告に於ては其の測定法について簡単に述べ,次にg-factor,吸収線の巾⊿H, relaxation time τ, damping constant λ 等の実験結果に対する検討を試みる。現在の実験で試料の磁性領域 (0<___x<___0.7)に於ける各測定値は大略次の様な数値をとることが分つた。9,700MCに於ては,3.7x10^<-10>sec<τ<9.0×10^<-10>sec, 0.40×10^8sec^<-1><λ<1.2×10^8sec<-1>, 140 Oe.<⊿H<320 Oe, 23,800MCに於ては,1.8×10^<-10>sec<τ<4.8×10^<-10>sec, 0.8×10^8sec^<-1><λ<1.1×10^8sce^<-1>, 240 Oe.<___⊿H<___600 Oe.