役畜のけん引機構は,歩行そのものと,けん引に対する適応との二面の機能を調和的に,かつ,満足に果させるものであろう。そして,けん引に対する適応の面に関する条件については,役畜を駐立させたままで,けん引をかけた場合の変化にみられる条件を追求することによつて,参考となる知識を得られるであろう。
このような観点に立つて,さきに,駐立させたままの山羊に,種々条件を異にしたけん引をかけた実験を行つて,その場合の姿勢ならびにけん引線(曳ぎ綱)のとる位置の変化や,前後肢別負重量ならびに四肢負重総量の変化などについての測定分析を行つたが,この度は,これらの変化を綜合的に考察して,それらの変化が,役畜がかけられたけん引によつて生ずる回転力に対して,その体の平衝を保つためのものであり,その平衡の条件は FD_1=W_pD_g であることを推論した。
なお,この研究は,昭和30年,京都大学農学部において上坂章次教授の御指導の下に,加藤正信助教授ならびに入谷明特別研究奨学生の御協力をいただいて実施したものであり,また,川島良治助手,大学院学生の方々ならびに研究生の方々の御助力をいただいた。ここに深く感謝の意を表したい。