島根大学論集. 人文科学

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島根大学論集. 人文科学 12
1962-12-20 発行

国際私法の本質について

三浦 正人
ファイル
a006012h008.pdf 1.9 MB ( 限定公開 )
内容記述(抄録等)
通常、国際私法が、「渉外的生活関係に適用せらるべき私法を決定する法」を意味することについて殆んど異論はない。しかし、そのような定義が、どのような目的をもち、どのような機能を果し、またどのような方法で行われるものであるかに立入って検討すれば、学説においてはなはだしい相異のあることは周知のとおりである。国際私法上の具体的な問題における議論の紛糾も、おおかれ少かれ、そのような基本的立場の相異からする混迷をまぬかれない。極言すれば、国際私法は、法の選択よりも、まず最初にいかなる学説を選ぶべきかが問題である。実践上の実益の問題はともかくとして、学問の出発点において、自已の姿を整えることは不可欠であり、国際私法のごとき、特殊な学説法にあっては、殆ど必須的といえる。本稿はわたしの抱く基礎的な考えを展示し、諸問題において、わたしが執るであろうところの方向を、あらかじめ確立しておくためのものである。ただ、国際私法の本質論のすべての問題を分析し批判するということは、かかる小稿において望むべきもないので、ポイントとなる若干の論点を抽出し、それをめぐって総合的に論じてみたいと思う。