動詞Promiseは、『制御(control)』という観点からみて、to不定詞を補文にとる他の動詞と異なる特徴を示す。以下の例をみてみよう。
(1)a. John promised Bill to leave.
b. John persuaded Bill to leave.
c. John wanted Bill to leave.
(1b,c)の場合、動詞leaveの意味上の主語(understood subject)は主節の動詞の目的語の位置にあるBillが対応するのに対し、(1a)では目的語のBillではなく、主節の主語Johnである。 Chomsky(1980)では、制御動詞(control verb)であるPromiseは語彙目録(lexicon)で[+SC]、すなわち、『主語制御を付与する』("assigns subject control")という素性が与えられると仮定されている。
主語制御動詞(subject control verb)であるpromiseはpersuadeのような目的語制御動詞(object control verb)と異なり、主節の目的語を主語の位置に移動する受動化を許さないのが普通である。
(2)a. *John was promised to leave.
b. John was persuaded to leave.
c.*John was wanted to leave.
Chomsky(1980)によれば、Promiseは主語制御動詞であるため、目的語が受動化により主節の主語となると、動詞leaveの意味上の主語、すなわち「制御詞(controller)」がなくなり、(2a)は非文となる。しかしながら、Chomsky自身が認めているように、「奇妙な例外」('curious exception')が存在する。
(3) John was promised to be allowed to leave.
この論文では、なぜ(2a)が容認不可能であるのに(3)が容認可能となるのか、その説明を試みる。