島根大学法文学部紀要. 文学科編

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島根大学法文学部紀要. 文学科編 12 1
1989-12-25 発行

画像認知をめぐる諸問題(2) : 認知モデルについて

Some Problems of Picture Recognition(2) : An Examination of the Cognitwe Model
松川 順子
ファイル
a003001201h006.pdf 2.26 MB ( 限定公開 )
内容記述(抄録等)
前稿(松川,1988)では,対象画像が呈示時間や呈示視野などの要因によってどのように影響を受けるのかといった基本的問題を中心に,画像認知について考察した。また後半では画像の理解に関わる心的表象の構造と機能について近年の動向に触れた。本稿は画像の理解と言語過程の関係に焦点をあて,研究法に関わるいくつかの問題を整理しながら多あらためて心的表象の構造と機能について検討しようとするものである。
画像を用いた近年の意味処理研究では,前稿でも述べた「共通表象説」と「二重表象説」の表象モデルの比較検討を目的の全部あるいは一部にしていることが多い。目的に対してさまざまな手続きが研究ごとに工夫されているが,そのためにかえって結果が矛盾を起こしたりして,議論を見えにくくしている嫌いがある。たとえば画像や単語をさきに呈示して,その後の標的(ターゲット)の画像や単語の命名(読み)・カテゴリー分類時間に影響を与えるかどうかを検討するプライミング法が近年よく用いられる。しかし,その場合にもプライムの扱いはさまざまで,プライムにも反応を求める条件やそうでない条件があったりする。また,カテゴリー分類もたとえば「りんご」を呈示して,直接的上位概念の「果物」を示す場合や,かなり上位の概念の「自然のもの」という分類をする場合がある。さらには反応の仕方も言語的反応(命名や読み)やキー押し反応の手法が混在している。また,現実的に実在する対象画像や単語であるかどうかの判断を求める課題を用いる研究もみられている。そこで,本稿では画像過程(画像理解の過程)と言語過程の関係について、具体的には両過程を含んでいると思われる画像の命名反応の実験を中心に近年の研究をいくつか紹介吟味し、さらにその他の課題との比較検討を行って問題点を整理することとする。そのうえで画像過程と言語過程の関係からみた表象モデルについてあらためて論じようとするものである。したがって、本稿では「共通表象説」と「二重符合化説」の妥当性についての議論には直接的には立ち入らない。
NCID
AN00108081