本論文はALS(筋萎縮性側索硬化症)の患者とその療養環境の実態把握について、地域における支援という視点から、その現状と課題を確かめようとするものである。現状の確認として、既存の調査研究を概観するとともに、各都道府県に問い合わせを行い、地域ごとの患者の性別・年齢・療養場所・人工呼吸器利用の有無について得られた範囲のデータを論文上に示した。近年の国の難病政策が、難病の原因解明という従来からの目的に加えて、地域における生活支援という方向性を強めてきているにもかかわらず、それに合わせた情報提供のしくみの整備は遅れている。現状では地域間の比較をするための手がかりは乏しく、自治体自身や関係機関、さらに当事者としての市民が地域の療養環境や支援体制の比較検証を行うためには、地方自治体を単位とした分析の実施・公表の促進、および政府統計をはじめとした現存する情報の公開範囲の適切な拡大が必要であることが示唆された。