はしめに
経済の急速な国際化にともない、いわゆる国際的タックス・コンペティションが激しさを増している。国際的タックス・コンペティションは、国家間の税(源)の配分を争う競争と、優遇税制や税負担の引き下げにより生産要素を引きつけ国際競争力を強化する競争とに分けられる。
ところで、このような国際的タックス・コンペティションが激しさを増す背景には次のような一般的財政状況をあげることができる。
第1は、先進国で特に顕著であるが、入口高齢化による社会保障財源の増加等により、これまでの政府機能を維持するためには国民負担の増加が避けられない状況が進んでいること。第2に、その結果、中央政府・地方政府ともに行・財政改革を推進し、公共部門のスリム化と民営化を進めることで税負担の上昇を抑えようとしたが、他方で民問サービスを購入する受益者負担が増加し、労働課税が強化されつつあること。第3は、国際金融市場の発達により、モピリティーの高い課税ベースヘの課税がますます困難になっている。その結果、これまでの各国税制の中心であった所得や資産を中心とした税体系を維持することが難しくなりつつあり、所得をベースとする課税から消費をべ一スとする課税へのシフトが起こっていること。そして第4に、企業の多国籍化の進展により、法人税には恒常的に負担の引き下げ圧力が働く一方で、代替財源が容易に見出せず早急に国内税体系の見直しが求められていることである。
本稿の課題は、このような背景の下で繰り広げられている国際的タックス・コンペティションに対し、米国、EC、日本の各国がどのような対応をしよう