島根大学教育学部紀要. 自然科学

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島根大学教育学部紀要. 自然科学 23 2
1989-12-25 発行

地学的自然としての花崗岩地帯教材化の試み : 花崗岩類深層風化殻の場合

A Study of Teaching on the Granite Areas as Geological Environments : On the Case of the Deep Weathering Crusts of Granitic Rocks
秦 明徳
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内容記述(抄録等)
 花崗岩は地球上で最も広い分布を持つ岩石である。日本においても花崗岩地帯は広い分布を示し,私達の生活と密接な関わりを持ってきている。このように日常的に触れやすい花崗岩は,世界各地で教材として取り上げられてきている。日本でも花崗岩を教材として取り上げた歴史は古く,明治時代以来,小中学校の理科教材として親しまれてきている。これまでの日本の学校教育での花崗岩の扱いは,教室内で岩片試料を観察し,深成岩としての組織と造岩鉱物を学習することに主眼が置かれたものであった。しかし,これでは花崗岩をほんとうに扱ったことにはならない。人間の生活の場であり,具体的時間・空間を占める大地を構成する岩石として花崗岩を捉えるよう,生の地学的自然の教材化が図られねばならない。
 平成元年改訂の新学習指導要領理科編(文部省,1989)においては,問題解決能力・探究熊力開発の一層の強化が図られる一方,学習内容と生活との結び付きを重視する指導を図ることが改訂の大きな柱の一つとなっている。また,小学校6年生での「大地の成り立ち」の学習内容が従来,地層教材一辺倒であったものが,今回の改訂により,自分たちが住んでいる地域の大地の様子を学習するように方向づけられた。これらの改訂の趣旨に答える意味においても地域の生きた地学的自然を探究でき,野外学習が可能なような「花崗岩地帯」学習の方法を研究開発する必要がある。筆者は,花崗岩地帯特有の深層風化作用について研究を進めてきている(秦 1987)。そこで,本稿では,花崗岩地帯教材化の手始めとして,花崗岩深層風化殼の実態と形成機構を明らかにし,その教材化を図る。さらに,それを用いた中学生対象の実験授業について報告する。