島根大学教育学部紀要. 自然科学

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島根大学教育学部紀要. 自然科学 13
1979-12-25 発行

ロッシェル塩結晶のX線トポグラフによる研究(II)

X-Ray Topographic Studies of Rochelle Salt Crystals(II)
酒見 次郎
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内容記述(抄録等)
 核四極共鳴吸収の実験の過程において初めて見出された核四極共鳴線と異る偽吸収線は,それが主として圧電性の物質において観察されることから,ピエゾライン(piezoelectric line)と名付けられたが,その後の研究によって,この現象が結晶の不完全性に関係していることや,この吸収線が結晶のある特別な微小部分に閉じこめられている振動に共鳴して生ずるものであることが暗示された。しかし,この吸収線を生じさせている振動がどのような種類のものであり,またその振動はどのような特別な部分に生じているのか等については不明であった。筆者は,このピエゾラインの成因を明らかにするためにロッシェル塩について,この吸収線の共鳴周波数を詳しく測定し,共鳴領域を探ること等によって,その振動が局所的な厚みすべり振動であることを明らかにし,また etching法やX線トポグラフィによって振動している部分は,転位の壁等によって境されている結晶の比較的完全な部分であることを明らかにした。しかし本当にその部分が振動しているのかということについては確たる証拠がなかったので,そのことを直接確かめるためにレーザー光を用いて微小な機械的振動を感度のよい光の強弱に変えて見る方法やリコポジウム(石松子)を結晶面に撤布して振動による粒子の運動を顕微鏡で観察する方法等を試みたが,何れも成功しなかった。X線トポグラフィによって初めてその局所的な振動を直接確認することができたのである。
 この度は,その局所的な振動の詳細なモードを明らかにするために,種々の異った共鳴周波数の電場で励振しながらX緯トポグラフを撮り,それらの写真について比較検討した。また,中村等はロッシェル塩結晶の c 面上の etch pits が c 軸に平行な転位に対応していることを顕微鏡による観察結果から結論したが,ここでは,それらの対応をX線トポグラフによって明らかにしようとした。更に,γ線照射によって生ずる結晶内部の欠陥をX線トポグラフによって観察した。